東方小説 6章 最終話

東方projectの二次創作小説です。
オリジナルキャラクター、設定の独自解釈があります。
特に自分の東方を幻想郷を大事にしたい方は、無理をして見る事はありませんので、
そこの所を宜しくお願いします







色々と考えてみたけれど、何も思い出せませんでした。
「行きなさい」とあの子に言われたものだけど、一体どこに行けばよいのやら……。
ひたすらに廊下を走り、階段を上っ先――そして、その先にある一つの扉。

ばたん、と開くとそこは屋上です。

数歩ほど前へ出ると、もう、そこには輝くような黄緑色をした庭が広がっています。
それにふわっとした暖かさを持つ空気。


「あら、貴方の仕事場はここではないはずだけど?」

ふと後ろから声がしました。
振り返ると先程のあの子がいます……。
刺さりそうなほどに赤く鋭い瞳がこちらを睨み、そしてその小さな手には日傘の絵が握られています。

「あっ……あの、私は……っ」

分かっているようで分からない感じ。
額から吹き出した冷たい汗が線を引きながら下へ流れていくのがはっきりと分かります。
嫌な……嫌な感じです。


「――分からないのね。なら、仕方ないわ」

一歩また一歩とこっちにあの子が歩いてきます。
動くことも出来ずにそれを見詰めていると、不意にその子の手元がギラっと輝きました。

「…………ッ!!」
私は思わず目をつぶります。
次にゆっくりと目を開いた時には、その光るものは私のすぐ目の前にありました……。

「ひっ……!!」

目の前にあるのは、赤く輝く一振りのナイフ。
今まで多くの人の血を吸ってきたように、奇麗に真っ赤に輝いています。

そして、それを手に構えている女の子とその冷たい視線。
それが意味するもの。


「それじゃ。さようなら」


ザクッ、という鈍い音が一つ。私の体からサーと落ちる一つの流れ。
もうダメだ……そう思いながら、ひたすらに目を閉じています。
どくん どくん と私の心臓が高鳴ります。

――心臓が高鳴る鼓動は痛いほどに体を揺らします。
その中でするりと何かが背中から流れ落ちました。
えっ?と思いながら、恐る恐る目を開けて、それを見ます。

それは……私の髪。


「――えっ?」

目を大きく開いている私の後ろで、先程まで確かに感じていた重みがなくなっています。

「これって一体……?」

何一つ分からず漏れた声です。目の前の女の子はナイフを投げ捨てると妖艶に微笑みました。


「これで以前までの貴方は死んだわ。だから今一度、私が貴方に名前を与える。
貴方の名前はサン……終夜サンよ」

「しゅうや……サン……?」

どこか懐かしい響きです……。終夜サン……それが私の名前……。
ビュウウッ、と強く温かい風が屋上を吹き抜けました。
その風に乗って、先程切り落とされた私の髪が宙を舞い、そして空へと消えました。


「さぁ、もう春が来たわね。春が来たから以前の貴方の忘れ形見……ピクニックをしないとね」

そうして、ぱん、と一つ手を叩くと、パッと突然に銀髪の女性が姿を現します。

「準備はできているかしら?」

「はい。私の能力と館の妖精をフル動員して準備を済ませましたわ。それに約2名ほど、呼んでもないのについて来るそうで……まぁ、それはサンが望んだことでしょうし大目に見ましょう」

「じゃあ、さっさと行きましょう。パチェや美鈴も一緒よ?パチェは断るかもしれないけど、サンの望みだから絶対って言っといて」

いきいきと声を弾ませている女の子です。
先程の雰囲気とは全く違う――和やかな雰囲気です。

「サン、貴方も早く着替えてきなさい。そんなパジャマじゃ、パチェと見間違えてしまうわ」

「はっ……はいっ!え……えーと」


この時、私が言いたい一つの名前。


「えーっと……えーと……」


今まで何度も想った大事な名前です。
形はあるのに透明で…・・・掴めません……。

「…………っ!!!」

頭を抱えながら、顔をゆがめます。
もう、ここまで考えているのに……どうして思い出せないの…・・・。
顔をゆがめて狭くなった視界の隅、そこに落ちているあるものが気にとまりました。
赤い……赤いナイフ。

(そう悪魔、赤い悪魔、スカーレット・デビル)

あっ……そうだった。
いつの事かは覚えてないけど、この言葉は……この言葉は……。

(私の名前はレミリア、レミリア・スカーレットよ、宜しくね、サン)

あぁ、頭のどこかに残っていたこの言葉。
それを見つけると、私は他のことはどうでも良くなりました……。
ただ、私は彼女の名前を――

「はっ……はいっ!レミリアおじょうさま!レミリアおじょうさまっ!!」

精一杯の声で言いました。
やっと……やっと言えたのです。
私の大切な人の名前……。

「……分かったから。さっさと着替えてらっしゃい。じゃないと置いていくわ。」
レミリアお嬢様は素っ気無く言いましたが、今の私にはそれで十分でした。
さぁ、着替えに行かないといけません。
私の着替えはさっき私が寝ていた部屋――私の部屋にあるのです。
そこにあるのは紅魔館のメイド服だけだけど……それで良いのです。


私は……終夜サン。レミリアお嬢様に仕えるものなのですから。
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by metal-animal | 2010-03-05 22:57 | 東方幻想入り小説 | Comments(4)
Commented by unyo-n at 2010-03-06 11:31
すごく面白かったです。
Commented by metal-animal at 2010-03-06 22:50
>unyo-nさん
ありがとうございます。
この調子・・・とは言わずに、これ以上になれるようがんばっていきますよ、うん。
Commented by 兎と亀マスク at 2010-04-21 00:28 x
metal-animalさん、かなり前に容疑者バトンに答えてくださりありがとうございました!

東方小説完結お疲れ様でした!
霊夢との対戦、最後の決着まで書かれないままいきなり場面が飛んだのでちょっと驚きました。
ラスト2話分は、夢の中にいるような、ちょっと不思議な雰囲気ですね。紅白ならぬ、真っ黒になっている霊夢が少しかわいそうですw
最後あたりの、レミリアからまたサンと名付けられるあたりの流れはちょっとよく分からないです。また1から再スタートということでしょうか。

最終章に至るまで、サンにとって本当に大切な存在はレミリア、レミリアを敬い、仕えることがサンの本分・幸せであるということが貫かれていて、読んでいて気持ちよかったです。常に一生懸命なサンはいつまでも応援したくなります。

また、metal-animalさんの書かれる東方小説を読んでみたいです。それでは。
Commented by metal-animal at 2010-04-21 23:28
>兎と亀マスクさん
ありがとうございます。
本当、霊夢との弾幕勝負とか構想自体が難しすぎて、何度けーね先生になかったことにして貰おうとしたことか分かりませぬ。
それでも最後まで書けたのは、兎と亀マスクさんを始めとした見えない方々のお陰です。ありがとうございます。

さて……

本編こそはこれで終わったものですが、未だ、俺が(最初に)東方小説で描こうと思っていたことは書いていないんですよ(笑)
だから、これからそれを頑張って・・・今一度筆を取ります。
どういうものになるかは分かりませんが、これが俺の小説だ!と思えるような面白い物語を書きたいと思います、うん。
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