カゼキリ風来帖 ~ 精霊鳥と生命の桜の章 その2

オリジナル小説です。
興味のある人だけどうぞ。




「わざわざこんな所で落ち合いますか」
ここは八霊山の中腹にある八霊湖の近くの川縁である。
つまり、あの蒼水れいの居場所に当たり、今日とてそれは例外ではなかった。
「良いじゃないですか。おいしい水もあることです」
蒼水れいが八霊名水の注いだ湯飲みを持ってきた。
「ありがとう」
「いえいえ、いつもお世話になっていますから」
にこにこと笑顔を見せる。

春の暖かい空気の中で、川の水面がきらきらと気持ちよく光っている。

「それで、話とは何なのでしょうか?」
「それがですね……」

ここからの高山はるかの話は実に30分ほどに至ったものだ。これには途中、蒼水れいが風切あやかをからかったという事情がある。流石にそれらを全て書き綴るには至らない。その30分にも渡る話を要約するとしよう。

八霊山には精霊鳥という鳥がいる。この精霊鳥、<精霊>と銘を打たれているだけに普通の生物たる鳥ではない。死んだ生命により存在を得ている。生命の鳥と言われているのだ。
精霊鳥は春になると巣立ち、八霊山を去る。そして世界を飛び回り、白雪の残る2月頃、八霊山に戻ってくる。
その時の精霊鳥は長旅の疲れのせいか、その身体は木の枝のようにほっそしとしていて、今にも消えてしまいそうなほどに存在が希薄になっているという。
それでも休むことなく、精霊鳥は次なる精霊鳥の為に巣の準備を始めるのだ。そして、巣が完成して間もなく消滅してしまう。


「消えた精霊鳥であった生命達は、精霊鳥の長旅によって浄化され、また新たな生命となります。次なる精霊鳥は、また死んだ生命を集め、存在を得て旅に出ます。……つまり、生命とは繰り返しであるのです」


この精霊鳥、話に寄れば、先代の精霊鳥の消滅をもって次代の精霊鳥が生まれるのだが、今年はどういう訳か、
「親鳥の消滅を待たずして、ヒナ鳥が生まれてしまった……」
のである。
「そんなことは今までなかったこと。だから、その精霊鳥の親子を見張って欲しい」
「分かりました。はるかさま。……それで、その精霊鳥というのは一体何処に?」


……というのが、この話の顛末であった。
一応聞いては見たものの、この時、風切あやかには心当たりがあった。それはこの話の読者も同じことだろうと思う。
そう……先程、生命の桜の木で風切あやかが出会った鳥のヒナ。まさしくそれが精霊鳥であったのだ。だから、風切あやかは特に驚くような様子も見せず、
「では、何か異変がありましたら、御報告すれば良いのですね」
と毅然とした丁寧な口調で言ったものだ。
そして、そんなあやかを見た蒼水れいは、ぎょっとして、
(はっは……。やっぱりはるかさまと私じゃ格が違いねえ)
そう思ったそうだ。
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by metal-animal | 2010-06-11 22:50 | カゼキリ風来帖 | Comments(2)
Commented by 兎と亀マスク at 2010-06-12 02:30 x
鳥の話が出てきた時点で、その1のあのヒナ鳥のことなんだろうなーと思っていたら、ナレーションで既に指摘されていて、心を見透かされたようでちょっとドキッとしましたw

背景の描写等から、自然にあふれた広大な山の中、という雰囲気がひしひしと伝わってきます。

話の要約~、の部分は要約するぐらいなら、普通に精霊鳥について説明した、でもいいんじゃないかと思ってしまいました。
要約するのなら、逆にそのあたりのことを全部書いて、具体的にどんな風に「蒼水れいが風切あやかをからかった」のかをちょっと見てみたかったです。

例年とは違うことが起こって、一波乱ありそうですね。続き、楽しみにしています。
Commented by metal-animal at 2010-06-12 23:34
>兎と亀マスクさん
要約うんぬんについては実験的に使ってみたのですが、自分でも見ていて「あれ…?」と感じていました。どうにも、文章の流れが悪いというかな・・・いつも自分が本を読んでいるようにすんなりいかないと感じていたんです。なので、次回では上手く使えるように勉強していきますよ。

背景については中々難しいもので、天候や季節感、雰囲気などを周囲にある何気ないものから描かなければならないんですよ。
今回は「春の暖かい空気」や「水面がきらきらと(ry」を用いましたが、まだまだ表現するにはあるんですね。それを見つけていくには読書をしたり、日常的に色々なものに目を向けなければいけない訳で……難しいですよ。
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