カゼキリ風来帖 ~ 残されしものの章 その7

久しぶりで申し訳ありませんorz
オリジナル小説です。興味のある方はどうぞ。







だからこそ、高山はるかはあの直後に愛刀中の愛刀「瞬天華」を磨ぎに出していた。
この愛刀「瞬天華」は高山はるかが護山家特務役のまとめ役に就任した時に山神さまから伝令役を通して送られたもので、この刀を使い、高山はるかは数々の戦果を上げてきたものだった。
山神さまから刀を送られるというのはそうそうあることではない。
八霊山の歴史の中でも、それは10に満たないと高山はるかは記憶している。
それだけにこの「瞬天華」は、
「ここぞ……」
という時にしか高山はるかは使わない。
この刀には八霊山の山神さまの「威信」と「名誉」が込められているからと言ってもよい。

「高山はるかさま、お預かりしていた小太刀をお持ちいたしました」

戸を叩く声が聞こえ、高山はるかは思案を止めて立ち上がった。
ここは高山はるかの小屋である。
今日は磨ぎに出していた「瞬天華」が帰ってくるという報せを柿留しょうから聞いていたもので、ずっと自分の小屋でそれを待っていたのだった。

「はい。ただいま」

戸を開くと、そこには磨師の山の精が居た。
「こちらがお預かりしていた瞬天華になります。ご確認をお願いします」
「分かりました」
高山はるかは丁寧に両手で差し出された瞬天華を受け取ると、その場で刀を抜き、刀身を見た。
太陽が雲に隠れた。部屋が少し薄暗くなる。
その中でも瞬天華の刀身は白銀色の光を宿し、そして輝いている。
「まさしく……私の瞬天華です」
「はい。ありがとうございます」
認めると、磨師の山の精から思わず安堵の息がこぼれ出た。
預かるものが預かるものだけに、この役には多大な心労が伴うものだ。
もしも預かっているうちに盗難や紛失……破損などがあろうものならば、その責任は全て自分達が負わなければならない。
勿論、それが山神さまから贈られた宝刀ならば、
「それには命を賭さなければならない」
であるから、その安堵の息にはとても重いものが込められているに違いはない。

それを見て、高山はるかは優しく微笑みを浮かべると、
「本当にご苦労様でした。これでおいしいものでも食べてください」
懐紙に包んだ小判を差し出し、すっと磨師の山の精の手へと両手で手渡した。
「え……あ……ありがとうございます」
磨師の山の精は少し驚いた様子で目を丸くすると、すぐに頭を下げて、小判を衣の懐へと仕舞いこんだ。
「それでは、また宜しくお願いしますね」
「はい。それでは……」
宝刀の重圧から開放されたせいか、磨師の山の精は声を高らかに挨拶をすると、軽い足取りで帰って行った。

帰っていった後で、高山はるかはもう一度、瞬天華を抜いた。
太陽が顔を出した。部屋の中に暖かい空気が舞い込んでくる。
先程と同じように……瞬天華の刃は一文字に伸び、その刀身には眩く鋭いほどの光を宿している。

そういえば……

高山はるかは、もう一振り、こうした輝きを持つ刀があったことを思い出した。その刀の名は、
「白風……」
という。
この大刀「白風」は持つものの力量によって、振った刀が白銀に瞬き、まるで、
「刀から白い風が巻き起こっているようだ……」
と言われる名答である。
この名刀は高山はるかの瞬天華と同じく、山神さまから贈られた宝刀の一つであり、その贈られた相手は、なんと、あの高山かなたであった。
高山かなたは諸国をまわる為に八霊山を出るとき、旅の無事を祈って山神さまに白風を贈られたのである。
この頃の高山かなたは自身の風竜剣を駆使して、多大な戦果を上げてきたものだった。
旅立ちの際に白風が贈られたのも、この戦果によるところが大きいのだ。
「白風……この瞬天華を見ていると、やはり、あの人のことが思い浮かぶ」
高山はるかの目に、あの頃の高山かなたが映った。
八霊山を出る前の……風切あやかに剣術の修行をつけている解きのあの光景であった。

「かなたさまの風竜剣は重過ぎます。私との稽古の打ち合いに使わなくても良いではないですか」
風切あやかは腰を落として、目の前に佇む高山かなたを見上げている。
その様子を高山かなたはじっと見つめ、そしてにっと笑みを浮かべると、
「稽古の打ち合い剣術じゃ、まず相手にも自分にも勝てないぞ?もし私が本気であやかと剣を交えることになったらどうするのか……それが分からない訳じゃないだろう?」
刀は真剣。それを鞘に収めぬまま、高山かなたは風切あやかと向き合っていた。

「あっ……」
春の終わりを感じさせる風が不意に部屋へ舞い込んできた。
それを感じて、高山はるかは思わず我に帰った。その瞬間のことだった。
電光のごとく振り下ろされる刀。刀を大きく天へ構える風竜剣。
あの黒い高山かなたの姿が高山はるかの頭の中をぐるぐると駆け巡り、やがて一つの答えとなった。
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by metal-animal | 2010-10-17 16:09 | カゼキリ風来帖 | Comments(0)
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