カゼキリ風来帖 ~ 残されしものの章 その10

かなり長くなってしまいましたが、残されしものの章 は今回が最終回となります。
続編はあれこれ……現在製作中ですのでどうぞお楽しみに。

オリジナル小説です。興味のある方はどうぞ。







さて……

あの風彩を打ち倒してから数日ほどして、高山はるかは風切あやかの小屋を訪れていた。
この日も空はすっきりと晴れ渡っている。暖かな空気、そして降り注ぐ明るい太陽の光を受けて、木々に生い茂っている葉っぱが青々と光っている。
「どうして私に話してくれなかったのですか!?」
高山はるかの話を聞いて、風切あやかはまずこれだった。
それはもう目を大きくし、更に布団から身を乗り出して、まるで必死の形相である。
(まぁ、予想はしていましたが……)
高山はるかは一つ溜息を吐くと、風切あやかの目を見やり、
「あやか、私は言いました。あなたが怪我を負っていなければ、あなたに任せていたと」
「う……」
じっと真剣な眼差しで高山はるかが言ったものだから、まるで蛇に睨まれた蛙のように、風切あやかは言葉を詰まらせ固まってしまった。

「そ、それで、かなたさまの影は一体なんだったのですか?浪霊……だったんですか?」
「それはですね。これの仕業だったようなのですよ」
高山はるかはすっと、一振りの大刀を前へ出した。
布のように一文字に伸びている青い鞘に収められたその大刀は、
「風彩……」
であった。
あれから山神さまの元へ持ち込まれた風彩は然るべき調査を経た後で、高山はるかの元へ戻ってきたのだった。
その際に、鞘を見繕い、その上に手入れもされた風彩は、唾にも鞘にも、僅かな埃や錆すらもついてはいない。

「これはかなたさまの……」
さすがに、風切あやかは風彩に見覚えがあったようだ。その様子を見ると、高山はるかは少しだけ口元に笑みを浮かべ、
「はい。あの人が使っていた風彩です。今はもう、普通の刀ですが」
そう言うと、すっと目を閉じた。頭の中に、山神さまの使いとの面会の様子が思い浮かんだ。
山神さまの使いは言っていた。
「山神さまは仰りました。今回の事件は、この刀があなたの姉であり、この刀の所有者であった高山はるかの姿を借りて起こしていた……と」
そして、こうも言っていた。
「こうなってしまった原因は、自分を残して、何処かへ旅立ってしまった彼女への寂しさと恨めしさ……そういった負の思念がこの刀に募っていたことにもあります」
「なるほど……そうでしたか」
それを聞いて、高山はるかは手渡された風彩をじっと見つめていた。


「そ、そうなのですか……」
簡単にこのことを風切あやかへ伝えてやると、高山はるかは風彩を手に取った。
ずしりと風彩の重みがその手に伝わってくる。
その風彩を見て、風切あやかを見ると、高山はるかは風彩を前へと出した。
「だから、この刀はあやかに持っていて貰おうと私は思うのです。あの人の一番の弟子であったあなたなら、この刀も喜んでくれると私は思うのですよ」
「えっ……良いのですか?」
「はい。山神さまも許可してくださいました。あなたの怪我が治ったら、使いこなせるように修行をさせるようにも仰っていましたよ」
「……はいっ!望むところです!!」
風切あやかの声が弾んでいる。表情もびしっとしていて何処か柔らかさが滲んでいる。
それを見ると、高山はるかの頬も思わず緩むのだった。

それにしても……

その一方で高山はるかは一つ気になっていることがあったのだ。
それはもう一つ山神さまの使いとの面会に出ていた話のこと……
「……つまり、風彩の事件は何者かが起こしていたというのですか?」
山神さまが言うには、風彩の負の念を具現化し、高山かなたの姿を与えた、
「何者かが居る……」
というのである。
春先の精霊鳥を狙った浪霊のこともそうらしい……風切あやかのあったことが本当ならば、浪霊そのものが短期間に強力な力を付けることも普通ではあり得ない。
だから、山神さまは最後に、
「何かが起ころうとしている……気をつける必要がある」
と低い声で言ったそうだ。


高山はるかは窓を見た。窓の外には青い澄み渡った空が広がっているのが見える。
(高山かなた……あなたは一体、何処で何をしているのやら)
この同じ青い空を、本物の高山かなたも、きっと何処かで見ていることだろう。
青い空はどこまでもつながっている。
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by metal-animal | 2010-11-27 00:50 | カゼキリ風来帖 | Comments(0)
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