metal-animal自作小説です。
今回で8週目・・・何処まで続くか分かりませんが多分15回くらいかなぁ。 って、その計算だとようやく半分かぁ、思ったより長くなるかな・・・こりゃ。 商店街を後にしたラフェンと帝斗は、川沿いの道を歩いていた。 普段なら通勤・通学でそれなりに人が居るのだが、今日は土曜日の為か見渡す範囲には誰もいなかった。 「今日は楽しかったかな?」帝斗が尋ねると「あぁ、はい・・とってもとっても楽しかったです」 【とっても】を強調した上で「本当にありがとうございます!」と力いっぱいの笑顔で答えた。 「そういや、願い事の件はどうするかな・・・全然考えてないや」 帝斗は苦笑いを浮かべ頭をかいている。 その仕草を見たラフェンの顔には何処か寂しさが浮んでいた。 帝斗は気がついていない・・・その寂しげな顔にある口が少しばかり動いた。 あぁ、その事なんですが・・・と言いかけた所で前方から不意に声が響いてきた。 「あぁ!やっと見つけたよ、ラフェン!」 その声に反応して前方に目をやると一人の少女が立っていた。 歳はラフェンと同じくらいだろうか・・・黄緑色のロングヘアーに森の妖精といったような 黄緑色の服にミニスカートを纏っている。 その少女が「何でいきなりいなくなったのかせ・・・」と言った所で、ラフェンは帝斗の手を引いて走り出した。 見た目に反した強い力でみるみるうちに帝斗は引きずられ、 その少女の視線から見えなくなった。 「はぁ、何でアイツあんなに足が速いんだろ」 やれやれと少し息を吐き、右手を頭にやり顔を振った。あぁ、悩ましい。 そして目を閉じて少しばかり言葉を出す、「ペッフェードラグルドバタフ」 この言葉を発した直後、少女の背中で光が発しそこに蝶の羽が現れた。 「そういや、アイツ・・・蝶そのものに変身できるのよね・・・あたしですら触覚どまりなのにさ」 蝶の羽を背中に出す事が出来るのは、黄緑の国の民だけに伝わる術であり、黄緑の国以外の国の者には一切使う事は出来ない。 その黄緑の国でも、この術は一般的に「背中に羽を出す」までしか使えない民が多い。 触覚を出す術は、とても難しく努力・・・というよりセンスの方が重要である。 その為に触覚を出せる民は、黄緑の国においては多少優遇されている。 また蝶そのものに変身する能力は、本当に限られたものである。 広大な緑の大地を領土とする黄緑の国でも僅か数人といった所だろうか。 「何だかんだですごいのよね・・・アイツ、でも授業だと全然ダメで叱られては落ち込んでたな」 単純な頭が災いして、目の前にある授業が全てだと思っていた彼女。 本当は自分が思っている程に弱くはないのに落ち込んでいた彼女。 彼女と過ごしてきた記憶が頭を駆け巡る・・・その中で彼女は気付いた事があった。 「うん?もしかしたらアイツ・・・」 小さく頷くと、彼女は蝶の羽を振るわせてその場を後にした。
by metal-animal
| 2008-12-20 22:37
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