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赤き心の龍戦士 第11話

metal-animalの自作小説です。
最近は一人称小説ばかり読んでいて、どうにも三人称小説の難しさを痛感しています。
ってか、間違ってるんじゃないかとさえ思ってしまうことがしばしば・・・うーん。

何故か最近読む小説は意図せずとも一人称が多いんです、うーん。







バッサバサ。
黒い雲に包まれたダーフ火山の中腹。そこは山肌が除く斜面と異なり、平らな地形を有している。
階段で言うならば踊り場のような場所と考えると正しいだろう。
兎にも角にもそこへ巨大な怪鳥がバサバサと翼で誇りを巻きたてながら降り立ってきた。

「ふぅ、ご苦労さん」
ジオルは怪鳥ウ・コッケイの背中を撫でながら労うと、ほっと背中から降りた。
トッ と軽い音を立てて着地した。しかしすぐにその体は崩れるように倒れた。
「ぐおッ・・・・・・やっぱダメか」
ジオルは溜息を吐くとシャラの方を見た。
まだ怪鳥の背中に居るシャラは見下ろす形でジオルを見ていた。
そして、ばつの悪そうに「・・・・・・悪い、頼む」と呟いた。

シャラは多分悪い人間ではない・・・・・・育ての親であり父であるグランディアを倒そうと思っている事以外は、取り分け嫌いではなかった。
しかし、それがやはり心配なのであった。
シャラは心を許せる相手であって欲しい・・・・・・つい最近出会ったばかりなのに小さくそう思っている。
だから、その一点のお陰でシャラの顔を良く見る事ができないのは何処か歯がゆいものだった。

そうして、シャラもまたトン と軽く地面に着地した。字折ると違って綺麗な着地だった。
「まったく・・・・・・しょうがないね」
溜息混じりに呟くとシャラは字折るの体を起こし肩を組んでは支えた。
「それで、何処に行けば良いのかな?」
「この穴をまっすぐだ。ここは空からじゃないと入れないから、外敵の侵入の心配も殆どないから迷路のような構造にはしなかったって親父がいってたんだ」
「へぇ・・・・・・そうなの」
シャラは適当に返事をしてゆっくりと進みだした。
それと同時に怪鳥はバサバサと何処かへ飛んでいってしまったが、シャラは全くそれを気にしなかった。

薄暗い一本道だった。時折、壁から炎が覗き通路を照らしている。
トントンとジオルの肩を持ちながら進んでいくと「ちょっと待て」とジオルが声を掛けた。

「なぁに?」
「もう少しした所に親父が・・・・・・グランディアがいる」
「えっ!!」
「だから、約束して欲しいんだよ。出会い頭にいきなり戦いを始める事はしないってさ」
「・・・・・・分かってるよ」
シャラは足を止め下を向いていた。
正直、今の言葉がなければ、グランディアを見た途端に斬りかかっていたかもしれない。
・・・・・・いや、本来の目的からすれば、それは正しいだろう。
しかし、自分をわざわざここまで連れてきてくれたジオルの事を思うと、それが正しいとは思えないのだった。

そして、これは罠かもしれないというの考えも未だ捨ててはいなかった。
でも、そうだとしたら・・・・・・。

色々な考えが頭の中を回って行く、正直にどれが正しい事なのか分からなかった。
とりあえず、話を聞いた上で決着をつけよう・・・・・・難しく考えず単純に、そう決めた。

「じゃあ、行くよ」
シャラは再び歩を進めた。「あぁ」とジオルは小さく返事をした。
そうしてすぐに、この通路の出口が見えてきた。
ぽっかりと空いた穴からは、薄暗い通路を照らすように光が漏れている。
暗がりに慣れていたシャラは左手で目を覆いそうになったが、そうはしなかった。
そして、その顔には数滴ほどの汗が伝っている。
にも拘らず目を覆う事も汗を拭う事もせずにただ歩を進めていたのはとても興奮していたからかもしれない。

「あぁ、そうだ。お前、その服は火や熱には強いか?」
「え、ま、まぁ・・・・・・これがあるから熱いのは大丈夫だよ」

そう言うと胸元から赤い宝石の付いたペンダントを取り出した。
金色の額にはめられた赤い宝石はまるで光っているように透明に輝いている。

「・・・・・・これは?」
「これは父さんの形見でね・・・・・・炎煌石って言って、身に付けている者を炎や熱から守ってくれるの」

確かに、そのペンダントの宝石はそのような力があるようだった。
まじないの類には興味も知識もないジオルだったが、その炎煌石がシャラの周囲の炎や熱を吸収して輝いているように見えるような気がしたのだ。

「じゃあ、大丈夫だな・・・・・・さぁ、あそこが親父の居る場所だ」
そう言うと、ジオルは光が差すその穴の先を指差した。
その先には・・・・・・遠めにも赤く巨大な龍が見える・・・・・・。

シャラは歯を食いしばり、ギリリと音を立てると少しずつゆっくりと歩いた。
そして、とうとうシャラはその場所へ足を踏み入れた・・・・・・。




グランディアは目を開けて、入り口の侵入者を見ていた。
一人は人間の少女だろうか・・・・・・見た事のない顔だ。その少女に寄り添う形で、見知った自分の息子とも言える少年が立っている。

グランディアは少し間を空けた後で、ゆっくりと丁寧な口調で言った。
「ふむ、おかえりジオル。して、その少女は何方かな?」
「あぁ、こいつは・・・・・・」
そう言いかけた所で、シャラはジオルの紹介を遮る形で声を荒げそして叫んだ。

「あたしはシャラ!!フォウの娘だよ!!!」
「フォウ・・・・・・」

ジオルは何とか今にも暴れだしそうなシャラを抑えなだめた。
シャラの気持ちは分からなくはない。今、目の前に親の仇が居るのだから。
大きく叫び呼吸を大きく乱しているが剣を鞘に収めたまま・・・・・・とりあえずは約束通りグランディアと戦うつもりはないようだった。
それを確認して一息吐くと、近くの岩場に腰を下ろした。

「フォウ・・・・・・そうかフォウの娘か・・・・・・」
グランディアは体を起こし何処か遠くを見るように視線を宙へ向けた。
そして改めてシャラと向かい合い目を合わせた。

「シャラ・・・・・といったかな。如何にも私は君の父フォウの仇と言える存在だ・・・・・・」
「・・・・・・」シャラはその言葉を黙って聞いていた。勿論ジオルもそれを聞いていた。

シャラは顔をしかめ小刻みに震えている。
グランディアはそれを認めた事よりも、ジオルはシャラの様子の方が気になっていた。
本来なら気になるのは逆であろう。ならどうして・・・・・・・。
そう考えている間にグランディアは話を続けた。

「それは紛れもない事実だ・・・・・・幾ら謝っても償いきれないだろう。しかし、私にもあの時にそうしなければならない訳があった・・・・・・それは」
「それが何だっていうのさ!!現に父さんは死んでるんだよ!?お前が赤の国さえ攻めなければこんな事にはならなかったんだ!!」

「・・・・・・ふむ」

グランディアは目を閉じ考え込むように黙ってしまった。
シャラもまた目に涙を浮かべハァハァと嗚咽を漏らしている。
先が見えない二人の様子をジオルはただただ見詰めていた。

やはり自分の選択は間違いだったのではないか。あの時、あのままシャラを見送るべきではなかたのだろうか。そういった後悔の念が少しずつ込み上げてきたのだった。

何とか二人の間に入ろうとも、そこに自分の入る余地は全く見えない。
グランディアの側へ付けばシャラとの約束を破る事になるし、シャラの気持ちが分からない自分はシャラの側へ付く事も出来ない。
結局、何もできない自分を情けなく思っていると不意に自分を呼ぶ声が聞こえた。

「・・・・・・ジオル」
それはグランディアの声だった。

ジオルは顔を挙げグランディアの方を見た。
グランディアは真剣な顔で頷くと口を開いた。

「ジオル・・・・・・そしてシャラ。これから話す事をどうか静かに聞いて欲しい。この話を信じるか信じないかはお前達次第だが、これから話す事は全て本当の事だ・・・・・・」

そう一つ断ると二人から視線を離し、そして宙を眺め『本当の事』を話し出した。
by metal-animal | 2009-06-27 19:45 | Comments(0)
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