東方小説 4章その6

東方projectの二次創作小説です。
オリジナルキャラクター、設定の独自解釈があります。
特に自分の東方を幻想郷を大事にしたい方は、無理をして見る事はありませんので、
そこの所を宜しくお願いします。


あとがき
毎回、アップする時は加筆修正を加えているのですが、今回は割と納得できない部分が多かったですorz今回の文章は1~2ヶ月ほど前に書いたものなので、色々と考え方が変わってきているという事なのでしょう。
そんな訳で、次回以降はちょっと手直しを強化していきたいと思います、うん。




方角からして私は紅魔館へ向かっているようです。びゅんびゅんと過ぎていく風が頬に当たりとても気持ち良いです。そうして、あっという間の内に私は紅魔館上空に着くと、少しずつ下降し、やがて着地しました。

私が着地すると、淡い水色の光が私の中より出て、やがて元のりゅうの姿へ戻ります。
状況から察するに、私が空を飛べたのはこのりゅうのお陰なのでしょう。りゅうが出た後で、宙へうけ~!とかぴょんぴょんと兎のように跳ねた所で一向に宙を飛ぶ事は出来ませんでしたから。


とりあえず、りゅうも連れ帰ったことですし、あの懐かしの紫パジャマの図書館へと向かいます。
余り日にちは経っていないものの、懐かしささえ感じる紅魔館。
館の中は出掛けた時と何も変わらない平静さを保っています。まるで館の中だけ時が止まっているのではないかと思ってしまうくらいに。
図書館に行き慣れていない私は少し迷ったものの、それとなく図書館の扉の前に着き、トントンとノックをして中へ入りました。

相変わらず薄暗い図書館の中。
数分ばかり歩いた先に、あの時……初めて咲夜さんと訪れた時と同じように本を読んでいる紫パジャマがおりました。
「おかえり。随分と苦労したようね」
「はい、妖怪の山まで行っていました……」
「……ふんふん。妖怪の山」

『妖怪の山』という言葉に少しばかり反応したものの、本から目を離さずに淡々とした声で紫パジャマは言いました。
「それで、使い魔は連れ戻せたのよね?さっさと見せてくれないかしら」
……相変わらずの気に障る態度です。ちょっと頭に来ましたが、ここはグッと我慢します。
紫パジャマなら、このりゅうの事を何か詳しく分かるかもしれませんから。


その為にも、「はい。ここに居ます」とりゅうを紫パジャマの前に出そうとします。しかしその時……

ブドバァァーッ!!!!と突如現れる青色の閃光。

突然、りゅうが水鉄砲を紫パジャマに向けて発射したのです。
水鉄砲は紫パジャマの居る当たりで爆発すると、水蒸気で図書館が霧に包まれました。
白い霧がもくもくと立ち込め、すぐ目の前の本棚もはっきりとは見えません。

あっという間の出来事に何が起こったか数秒ほど分かりませんでしたが、心の底では「やった!!」とほくそ笑んでいました。とはいえ、間違っても今のは私の命令ではありませんよ?りゅうが勝手にやったんです。ええ。

私は心の底で笑うのを我慢して、紫パジャマが居た辺りを見つめていました。
だんだんと霧が晴れていきます。うっすらと霧の向こうから見えてきたもの、それは――


それは……何事も無かったかのように本を読んでいる紫パジャマでした!?
「なんで!!」と声に出そうでしたが、私はそれを飲み込みます。外には出しません。

「ふぅ、相変わらずね。今のが貴方の意志かは知らないけど、使い魔をコントロールできないのは貴方の力不足よ」
紫パジャマはパタンと本を閉じると、初めて私とりゅうへ目をやりました。
紫色で眠たそうな、それでいて鋭い視線です。
しかし、私を見たのは最初の一瞬だけで、その殆どはりゅうへ向けられています。

「ふぅん。あの水流といい、この使い魔は水属性ね。この子自体の力は強いけど、肝心の貴方が弱いとはどういう事かしら」
……言葉が胸に刺さります。事実とはいえ嫌らしくも悔しい。それが紫パジャマクオリティ。
「でも、使いこなせればあるいは……」
ぼそりと紫パジャマが呟きます。
元々紫パジャマは声が小さいのです。その上で独り言を呟いては誰にもそれを聞く事はできないでしょう。
「うん?今なんて……」と私が尋ねてみましたが、例によってそれを無視すると、
一冊の本を取り出しました。
そしてパラパラと数ページめくった所で手を止め、左から右へ目を泳がせます。
一々紫パジャマの言動に振り回されるのもなんせんすだと思った私は、じっと彼女の行動を見守る事にしました。

「うん、これね」
紫パジャマは小さく頷くとそのページを開いたまま、本を机に置きました。
そして私とりゅうに目をやると言いました。

「この本によると使い魔を従わせるには、儀式が必要なようね。内容は主人が使い魔に接吻……まぁ、よく聞く話よ」
接吻……というと口づけですね。英語で言うと、キッスです。
うーん、ファーストキットの記憶はありませんが、まぁ、彼なら……って、りゅうはオスでしたでしょうか……。
ど、どちらにしても、付き合いこそは短いものの、妖怪の山での事もあるので、特に抵抗はないですよ!

「……何を考えているか知った事じゃないけど、さっさとやってくれないかしら?」
紫パジャマが時間の無駄だとばかりにジト目で睨んでいます。
ほとほと紫パジャマは私に興味がないと見えます。あるとしても使い魔のりゅうの方なのでしょうねぇ。さっきから本を読んでいる時にもしきりにりゅうをチラチラと見ていましたから。
あぁ、そんな些細な行動すらも見逃していない私。寧ろ、粗の一つくらい見つけてやろうと思っているのですが、どうにも本を読んでいるだけで全く見つからないんです。

……って、あぁ、こんな事を考えている間にも、紫パジャマが「さっさとしてくれない?」といったジト目でこっちを睨んでいます。
これ以上待たせると、どんな嫌らしい言葉攻めが来るか分かったものではありません。
私は、りゅうへ寄ると、ゆっくりと口……は大きく無理なので、鼻の頭にでも口づけをします。
1秒、2秒……あるいは3秒して、私は口を離します。
心なしか、りゅうの顔が紅潮しているように見えましたが、多分気のせいでしょう。

「さて……どうでしょうか」
私は何らかの変化に期待をしますが、1分、2分、3分経っても何の変化も起こりません。
こうしている間に ふぅ と一つ溜息を吐く音が聞こえました。
そう、紫パジャマです。あれだけ急かした紫パジャマが溜息を吐いたのです。

「サン……だっけ?何か変わった事はないかしら。些細な事でも良いから教えなさい」
……名前は合ってますが、忘れられかけてますね。
さっきから『貴方』としか呼んでいなかったので、忘れかけてたんですね……。
とりあえず、何の変化も起こっていないし、何も分かりませんよ。
うーん、簡単な気づいた事……あぁ、これですね。
私はポンと手を叩いた後で言いました。

「え、えーと。りゅうの顔が少し赤くなったくらいでしょうか」
「…………」

些細な事でもと言ったのは紫パジャマの方なのに、侮蔑の目で睨まれました。

なんで私が……。

「まぁ、良いわ。暫く観察してみるのも悪くないわね……。何にしても今日はもう遅いから戻って良いわ。そのりゅうは……」
「自室に連れて行きます!!」

紫パジャマの言葉を遮り、私は叫びました。
私の可愛いりゅうを紫パジャマと一緒に置いておく事は絶対に許しません!
私の見ていない所でコソコソと何をするか分かったものではありません。

紫パジャマはちょっと不満そうなジト目で私を睨んだ後で言いました。
(ちなみに、ジト目という表現は何度か使いましたが、不満そうなジト目は急かしているジト目と全く違います。何かこう露骨に嫌そうな雰囲気と『気』が薄暗い紫色で出ているのですよ)

「……分かったわ。その代わり、何か変わった事があったらすぐに教えなさい。良いわね?」
「分かりましたぁ!」
私はしてやったりとばかりに、さっそうとりゅうを連れて出口へと向かいます。
出口の辺りでは、頭から蝙蝠の羽を生やした司書さんが本の整理を行っていました。
「お疲れ様です」と私が挨拶をすると、「そちらこそお疲れ様です」と笑顔で返事をしてくれました。あの紫パジャマのお手伝いをしているとは思えない程に本当に明るい笑顔でした。


そうして私は自室に戻りました。久しぶりの自室です……帰ってきたという気持ちが込み上げてきます。さぁ、レミリアお嬢様の肖像画にお帰りなさいの挨拶を済ませた所で、私は自室の変化に気がつきました。
「あれれ?こんなのあったっけかな」
自室の隅に鳥の巣のようなベッドが一つ置いてあるのです。
見た感じ、りゅうの為のものでしょうか。そっとりゅうをそこへ促してみると、すっぽりと奇麗に納まりました。

「うーん、一体誰が……?」
私は思わず自室を見渡しましたが、それ以外の変化はみられません。
思い当たるとすれば、咲夜さん?めいりんししょう?……まさか紫パジャマ?
……めいりんししょうの線が濃いでしょうか。しかし、このいつの間にか感は咲夜さんのにおいがします。紫パジャマは論外ですね。自分の手元に置こうとしたくらいですから。

まぁ、いいや。明日、咲夜さんに会ったら聞いてみましょう。
あぁ、それにしても疲れました。お風呂などを済ませたい所ですが、まずは久しぶりのベッドで横に……むにゃむにゃ。
そうして私は、そのまま寝てしまいましたとさ。
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by metal-animal | 2009-09-04 21:38 | 東方幻想入り小説 | Comments(2)
Commented by ネイムレス at 2009-09-05 13:34 x
どうも、読ませていただきました。
中々の長さで読み応えがあり、長い文章が個人的に好きなのでとても楽しめました。
今回は何時もより主人公の行動描写が多かったように感じました。こうして細かく情報が提示されると、キャラクター像がつかみやすくていいですね。
パッチェさんのあのジト目は良い物です。媚びぬ引かぬ省みぬなジト目少女であるのがやはりパッチェさんなのでしょう。流石に良くキャラを掴れていると思います。

それでは、番外編のチルノ物語も盛大に期待しておりますね。
失礼します。
Commented by metal-animal at 2009-09-05 23:53
>ネイムレスさん
推敲などで原稿を読んでいると、文章の繋ぎ目がおかしかったり、描写が足りなかったりで何がなんだか分からないと眉毛を釣り上げる事がしばしばありますねぇ。
それもまた後で見ると助長だなぁと思ったりで、ストレートにこれで良い!と思える原稿ってのはそうそうできないですよ(笑)

パチュリーのジト目では紅魔郷4面の「ところで、あんた、誰?」という台詞が好きですね。台詞まわしといい中々にシュールです。

チルノの番外編も↑の事が結構あって色々と苦労していますが、どうぞお楽しみにしていて下さいな。
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