東方短編小説 チルノ編 『本当の最強』 第5話

この小説は二次創作です。
原作の世界観、設定を重視していますが二次創作です。
独自の解釈や二次設定があります。
どうか、それを忘れずによろしくお願いします。





そうして数日が経ちました。
チルノは、その数日の間に、あおいへのプレゼントを用意していたのです。
今まで見てきた中でもとびっきりきれいな花を氷漬けにしたものです。
透明な、透き通るようにきれいな氷に包まれた花は太陽の光を受けると、驚くほどにキラキラとプリズムをして輝くのです。

いつもなら蛙を氷漬けにするものですが、それではあおいは喜ばないでしょう。
だから、花を氷漬けにする事にしたのです。
「えへへ、これを見たら、あおいはきっと驚くぞぉ!」
チルノは、そんなあおいの驚く様子を考えながら、意気揚揚にあおいの家へ飛んで行きました。


とんとんとあおいの家の戸を叩きます。
「あおいー!あたいだよ!チルノだよー」
心を躍らせながら、あおいを呼びます。

「…………」
「あおいー!あたいだよー!いないのー?」


「……………………」


返事は全くありませんでした。いくら呼びかけても、中からは何の音も聞こえてはきません。
だんだんと、チルノは不愉快な気分になりました。
いつもなら、「こんにちは、チルノちゃん」と言って、笑顔で出てきてくれるのに、今日は何の反応もなし、無視されているのですから。

むむ、今日は意表を突いて、あたいを驚かせようとしているのかも……そう思ったチルノは、
その手には乗らないよー!!と意気込みながら、力強くあおいの家の戸を開けました。
バタンと音を立て、開かれた家の入口。そこからは、家の中の様子が覗う事ができました。

入口から見える家の中。そこは、返事がなかったのも当然のように動きもなく静まり返っていました。
「あれ、本当にいないの?」
特に何も考えず、チルノは一緒に食事をした囲炉裏の間を抜けて、その奥の――布団のあった部屋へと入りました。


……そこで……。


ゴトッ という鈍い音が静寂の中、一つだけ響き渡りました。
これは、チルノが持っていた氷漬けの花が木の板で出来た床に落ちた音です。

「…………あおい?」
チルノは小さく呟きました。
確かに――確かに、あおいはそこに居ました。
布団の上で仰向けになって、安らかに……そう安らかに。

「あおいっ!!」
思わず、チルノはあおいの肩を掴み、上下へ揺らしました。
「あおいっ!ねぇ、起きてよ!あおいっ!!」
チルノはあおいを起こそうと必死に呼びかけました。ですが、ただただ何も言わずに揺れるだけ・・・あおいは全く目を開いてはくれませんでした。
前はチルノの冷気で白くなった息も、今は少しも出ていません。


「ねぇ……起きてよ……目を開けてよ……」
チルノは目を強く結んで叫びました。結んだ目の間から涙がこぼれ、あの日のように、あおいの顔へ落ちました。
あの日なら――あの時なら、これで目を開いてくれたものですが、今はもう……いくら落としても目を開いてはくれないのです。

うう……あおい……あおいっ……チルノは、青い目を真っ赤にしながら、あおいの顔を見下ろしていると、視界の隅、奥の机に白い紙が置いてあるのに気がつきました。

「うぅ……?」
チルノは力なくずるずると這うように、机の前へ移動すると、その白い紙を手にとりました。
そこには、チルノちゃんへ――と書かれたあおいの手紙があったのです。

「あおい……?」
手紙を広げ、中身を見ます。そこには……


チルノちゃんへ

ごめんね、チルノちゃん。これをチルノちゃんが読んでいる時には、きっと私は最強の自分から解き放たれている事でしょう。前にも話した通り、私はありとあらゆる術を使う事ができたの。でも、それは私みたいな人間が使うには過ぎた代物だった。それでも私は、最強でありたくて、何でも出来て偉い自分でありたくて……その術を使い続けたよ。でも、私は気付いたの。最強で……何でも出来て偉い事は何の意味もないんだって。

それで結局、私は、最強の力で戦う事しかしていなかった。残ったのも、むなしさと術の反動で弱った心と体だけだったから。


本当は、残った命の長さも分かってたの。チルノちゃんと一緒の楽しい日々を過ごしていて、このままだと、チルノちゃんを悲しませちゃうのだって分かってた……ごめんね、チルノちゃん。でも私は後悔なんてしていないの。だってね、私の力がチルノちゃんの為に使えたから。

私の力は常に戦いを呼んでは、妖怪や人間を傷つけてきた。でも、最後の最後で、それとは別の……本当に大切な人の為に、本当の最強の力を使えた。

だから、ありがとう。

チルノちゃんと過ごした日々は本当に楽しかったよ。
そして、出来れば忘れないで欲しいな。本当の最強の事を……。
私が守ったチルノちゃんなら……私の大切な人だったチルノちゃんなら、きっと本当の最強になれるから。私はもう一緒にはいられないけど……チルノちゃんの本当の最強はきっと私と共にあるの。だから、悲しまないで。 

                                              青空あおい



「あおい……」
チルノは立ち上がると、澄み渡るような紅葉、そして青空を映している窓を見ました。
窓に映し出されるは何処か寂しげな秋の風景。
それを見ていると、あおいと過ごしてきた日々が頭の中に次々と浮かんできました。
囲炉裏を囲って一緒に食事をしたこと、一緒に笑って過ごした日のこと、そして……自分を守ってくれた時のこと。

チルノは右手で、目元の涙を大きく振り払いました。
「あたい……頑張る。本当の最強になるよ……だから……見ててよ!!」

目は真っ赤でしたが、チルノの目はキラキラとした光が灯っていました。
それは、先ほど床に落としてしまった氷漬けの花が太陽の光を浴びて放っていたプリズムの輝きよりも、ずっとずっときれいで大きな輝きなのでした。
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by metal-animal | 2009-09-10 18:39 | 東方短編小説 | Comments(0)
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