東方projectの二次創作小説です。
オリジナルキャラクター、設定の独自解釈があります。 特に自分の東方を幻想郷を大事にしたい方は、無理をして見る事はありませんので、 そこの所を宜しくお願いします。 「おお、妹紅、来ていたのか!」 木造の寺子屋に着くなり、上白沢さんが声を上げました。 その声の先――教室でしょうか、足の短い机と小さな座布団が並べられた部屋に、 一人の女の人が座っていました。 紅いズボン(もんぺというべきでしょうか)に白い服、それに輝くような白色の長い髪が無造作に畳の上に垂れています。 女の人・・・・・・というより、女の子でしょうか。年も私と同じくらいに見えます。 ですが、私には何だか、その女の子を『女の子』として見る事ができませんでした。 『女の子』という雰囲気ではない――それよりも年を重ねた『女の人』というのが正しいような、そんな雰囲気、風格を纏っている・・・・・・そんな気がするのです。 「妹紅が里に、それも私の寺子屋に来るなんて珍しいな。何か良い事でもあったのか?」 上白沢さんは、その女の人に親しく語り掛けました。 妹紅と呼ばれたその女の人は、ちょっと笑顔を浮かべた後で髪白沢さんに言葉を返しました。 「はは、それは少し違うね。良い事がありそうだから来たんだよ。こう永く生きていると良い事がありそうな日の朝は空気が違うのよ」 長く生きている?私はこの女の人の何気ない、この一言が気に留まりました。 上白沢さんを間に挟み、私が不思議そうにその女の人を眺めていると、その女の人も私の事に気付いたらしく、興味深げに顎下に手を置き言いました。 「そこに居るのは見ない顔だけど、どちら様?新しい生徒?それとも慧音のお客さんかしら?」 「・・・・・・どちらかというと後者だな。まぁ、それはそれとして、この服装に見覚えはないか?」 「そうだね。それはさっきから思ってたんだけど、何処だったかなぁ・・・・・・うーん。本当、どうでも良い事は全く覚えてないのよねぇ」 女の人は頬杖をつくと、うんうんと考え始めました。そして、何か思い立ったようにポンと手を叩くと言いました。 「ああっ、そうだ!あの肝試しに来たって言う吸血鬼と一緒にいた奴が、それと同じ服を着てたんだ!どうにも吸血鬼の方が派手に暴れてたから印象が薄かったけど、そういえばそうだったよ」 女の人は先程に続けてポンポンと手を叩きながら、喉のつかえが取れたような、すっきりさを堪能しています。 「そう、あの時の吸血鬼の所で働いている者で名前は終夜サンというんだ。サンの連れているこの妖怪が里の者を驚かせてな。それで私が出向いたんだが、どうにも里を襲うつもりがないようだから、話をしようと連れてきたんだ」 「へぇ、なるほど、ねぇ」 女の人は、殆ど上白沢さんの話を聞いていないように見えました。 終始、ちらちらと別の所へ気を散らしているようで、窓から見える青い空や黒板の汚れなどを見ていました。しかし、重要な所だけはしっかり聞いていたようで、話が終わると間も無く、私の顔とりゅうを眺めていました。 「ふーん、そっちのは人間だけど、そっちのは妖怪とは違うね・・・・・・自然の一部?うん、妖精に近いものじゃないかな」 「え?分かるのですか・・・・・・?」 「一応、永生きしてるからね。色々な奴に会ってきたけど、そいつから感じるのは妖精が一番近いよ」 ・・・・・・。紫パジャマはそのりゅうの事を私の『気』から生まれた使い魔だと言っていましたが、この女の人が言うには自然の一部――妖精に近いようです。 妖精といえば、紅魔館の妖精メイド達が真っ先に浮かびますが、このりゅうは彼女達のどれとも違います。 そういえば、自然の妖精といえばチルノさんもいましたね。 チルノさんは氷の妖精で冷気を操る事が出来ました。このりゅうもまた水を操るようなので、 きっとその点が近いという事なのでしょう。 私は頷き、りゅうに目をやり、そして頭を撫でてやりました。水を撫でたような透き通った感触が冷たさと共に伝わります。りゅうは気持ち良さそうに目を細め鳴きました。 「それで、どうするの?里を襲うつもりがないなら、帰しても良いんじゃないの?」 女の人が上白沢さんに言いました。 「だがな、この妖怪・・・・・・あぁ、妖精が里をうろついていると、里の人達が怖がるんだ。それで連れてきたんだが、そうだな」 そう言うと上白沢さんは、私を見ました。 「そういえば、食料を、野菜を調達しに来たとか言っていたな。じゃあ、私がそれを集めてこよう。私も丁度用があるんだ」 えっ、ええっ!私は上白沢さんの提案に戸惑いました。 「そんな、悪いです。なら私も――」そう言った所で、りゅうの事を思い出し、言葉を詰まらせます。 「そうだ。サンがついて来ると、りゅうもついてくるだろう。そうすると里の者が怖がる。だからといって、りゅうをここに残して置いて行くと、何かあった時に困る。だから、サンとりゅう、そして妹紅で私が寺子屋を空けている間の留守番をしていて欲しいのだ」 そうですか・・・・・・。と私は一言呟くと、ポケットからメモを取り出しました。 「じゃあ、これをお願いします」 私はメモを上白沢さんに手渡すと深々と頭を下げました。 「ああ、分かった」と上白沢さんはメモに目を通すと、「妹紅、頼む」と女の人に声を掛け、教室を後にしていきました。 教室に残ったのは私とりゅうと妹紅という女の人だけとなりました。
by metal-animal
| 2009-09-25 18:26
| 東方幻想入り小説
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Comments(2)
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ネイムレス
at 2009-09-26 01:24
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どうも、読ませていただきました。
良い所で終わってしまった。 面白い文章はたっぷりと時間が掛かっても、一気に読みたいと思ってしまうのは贅沢でしょうか。 妹紅とサンさんがどう会話するのか、次回が気になりますね。 妹紅の口調は原作通りの物でしたね。 やはり原作を何度もプレイして研究されているだけ在ります。 肝試しの夜のあの妹紅だなーとなんとなく納得してしまいました。 もうどんどん喋らせて欲しいですね。 それでは、この辺で失礼いたします。
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metal-animal at 2009-09-26 23:12
>ネイムレスさん
こんばんは。毎度、読んで頂きありがとうございます。 俺としても、もう少し長くしたい所でしたが、そうすると後々の区切りに響いてしまうので・・・(苦笑) 妹紅は、喋りのコツというか一つ一つの喋りの感情を自分なりに掴めているのが大きいですよ。多分、妹紅ほど気持ちが乗せられる事は多分ないと思うくらい自分でも良く出来たと思っています。 来週は多分、少し長く楽しめるようになるので、どうぞ、お楽しみに。
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