東方小説 6章その5

東方projectの二次創作小説です。
オリジナルキャラクター、設定の独自解釈があります。
特に自分の東方を幻想郷を大事にしたい方は、無理をして見る事はありませんので、
そこの所を宜しくお願いします



「ふぅ……今のは驚いたわ」

そう言って姿を現したのは博麗霊夢……。
あの爆発の中では流石に無傷ではないようで、特徴とも言える紅白の巫女服は所々焼け焦げており、何処か黒ずんだシルエットが私のフィールドから見受ける事ができるのです。


「まったく……天人、河童、雪女と来たら、次は地獄鴉とか。本当、面倒な連中のフルコースなんだから」
そう言いながら、自分の状態を上から下へ見ていきます。
黒く焦げた所を指で摘んでみたり、叩いてみたり、そして腰に手を当て気だるそうに、はぁっと息を吐いたその時です。

「霊夢、2被弾目ね。2-2、二人とも泣いても笑っても次で終わりよ」

淡々とした紫パジャマのアナウンスが響きます。
それを聞いて、私はほっと胸を撫で下ろしました。
とりあえずは大丈夫、まだ勝負ができる……まだ勝機があるっ!と確信できたからです。
――まだ勝負終わってませんが、勝利の可能性を残して勝負が出来る事……それが何よりも今の私にとっては重要なのです。私の全て力を賭した攻撃――もしそれが外れてしまっていたならば、最早、勝機はないでしょう。それだけに、この攻撃で被弾させる事ができたというのは、とても意味がある事なのです。

「あーもぅ、言われなくてもそんなの分かってるわよ。――それよりも、あのでかいのがスペルを連発するのは反則じゃないの?」
ぴっとしんりゅうがいた辺りを指を差し、口を尖らせながら博麗霊夢は言いました。
「あれはスペルの効果だから、スペルカードには入らないわ。それに、そんな事を言ったら私のスペルも同じ様なものよ?そんな事も分からないなんてやっぱりあんたは――」
淡々とした口調で紫パジャマが答えます。
これはいつもの人を馬鹿にしたような言い方です。俗に言う、ジト目の嫌味口撃。きっと今頃、椅子に座りながら「ふんっ」と鼻で笑っていることでしょう。
そんな様子が目に浮かびます。


「だぁー!!もう、あんたの小言なんか誰も聞きたかないわ!……終夜さん、これでお互い2-2で残りのスペルカードも1枚ずつ、次のとっておきで勝負を終わらせるからね!勝っても負けても恨みっこはなし!」

望むところ!そうビシッと答えたい所ですが、ここからは今までのようにはいかないのです。
先程の「雨龍自在の術」と「しんりゅう」。これら2つのスペルカードで失った力は尋常じゃないのです。『気』で出来ているとはいえ雨を降らせたり、大きな力を持つ攻撃を放つのは、とても簡単な事ではないのです。恐らく、私の『気』の8割か9割……もしくはそれ以上を使っている事でしょう。それに「しんりゅう」の発動で体からりゅうも抜けてしまいました。もうこの勝負中には戻る事はありません。だから、ここからは私一人。残された僅かな力の全てを使って……限界を超えてでも戦わなければならない――

「サン、使い魔はフィールドから出してあるわ。試合を再開するわよ」


                    ※

「ふわあぁ……皆、今頃サンさんの試合を観てるんだろうなぁ……。師匠として、私も観ておきたいのに咲夜さんときたら『こういう時こそ、門の番をしっかりするのよ』とか言うからなぁ……って、あれあれ?」

「キュウウウウ!」

「シャオロン!何でこんな所に!?……あぁ、サンさんが貴方の力を使ったんですね。それで……うんうん、勝負はまだ続いていて勝負は終盤、なのにサンさんは『気』の殆どを使って、その上、自分まで抜けちゃって、ここからはサンさん一人で戦う……と、そうですか」

「キュアア……」

「そうですね。心配ではありますけど、サンさんを信じてあげなきゃダメですよ!今はもう、地力で色々頑張ってるサンさんだけど、その地力を付けたのは、この私こと『紅美鈴』の修行のお陰なんですから。きーっと大丈夫ですよ、ええ!」

「…………キア」 

                     ※

(はぁっ はぁっ)
息をする暇のないほどに凄まじいスペルカード。

「夢想天生」

本当に、本当に息を吐く暇もないほど早く……そして速く、鋭い『気』の込められたお札が、綺麗に私を目掛けて流れてきます。


(…………ううっ)


大まかな最大限ときめ細かい最小限。
ある程度大きく『気』を巡らせてある程度の弾を見切り、その上で、ものすごい速さで迫ってくるお札を自分のすぐ周囲に集中させた『気』で感知して避ける。

息を止めながら、四方八方。次々と注意を向けます。休む暇……息を吐く暇なんて、一瞬たりともありません。


(…………でも)


私には……1つの確信がありました。
このスペルカードは博麗霊夢のスペルカードである事。
ここまでの戦い――そして、あの霧雨魔理沙の言葉。

だんだんと激しくなるこの弾幕の終わり――「夢想天生」が最大にして最高を迎えた瞬間。

そこに……最後の勝負があるのです。
もう『気』を溜める事も出来ないけれど……でも、勝負は……勝負だけはします。
この戦いが終わったら……私は……。


「…………」

もう息をする事もせず、自分のすぐ周囲に展開した『気』だけで弾幕を避ける。


ティン!ビィン、ディンデュン!!

火花を散らしながら、私のそばをお札が過ぎていきます。
思えば、このグレイズというらしい火花は、めーりんししょうとの弾幕勝負でも出ていました。
……あの時は「カティカティ」という小さく乾いた音だったのですが……この「夢想天生」のそれは最早、小さな爆発だとも思えるほどに鋭い火花を散らしています。


あの時のグレイズと今のグレイズ。
あの時の私と今の私。

りゅうが抜けているという意味では、あの時と全く同じ私じゃないですか。


「私は……」

すっと右腕が動きます。


(私は……この弾幕勝負に勝って少しでも……少しでもレミリアお嬢様に近づきたい)


あの時の私が、めーりんししょうとの弾幕勝負で強く想ったこと。

でも、今は違う。


「私は……」


四方八方から迫る弾幕。もうその全てを捕らえる事はできない。


「私は……私は……」


残った全ての力を集めて、そして――


「私は……レミリアお嬢様達とっ!!いつまでも一緒にいたいんだぁッ!!」


ああああああ!!!という叫び声を響かせ、私はスペルカードを前へ押し出しました。
そして、全てが――
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by metal-animal | 2010-02-06 22:45 | 東方幻想入り小説 | Comments(2)
Commented by 兎と亀マスク at 2010-02-17 07:50 x
metal-animalさん、バトンに答えて下さりありがとうございました!metal-animalさんのお名前にはそういう意味があったのですね~。

霊夢とサンのバトルも大詰めですね、単純に次々に攻撃を出すだけではない、心理戦みたいな部分もあって、読んでいて引き込まれます。

その5だと、被弾して少し黒こげになった霊夢が自分の状態を確認して腰に手をあてて溜息ついたりとか、なにげない仕草も細かく描かれていて、ああ、文章の中でキャラが生きているなーと感じます。

グレイズの音の違いからも霊夢の攻撃の凄まじさが分かったりとか、弾幕表現の描写がやはりいいなーと思います。
あと今回の美鈴とか、本人のいないところで誰かが応援してるとか、すごく燃えます。

それでは、次回も楽しみにしています~。
Commented by metal-animal at 2010-02-17 23:22
>兎と亀マスクさん
コメントありがとうございます。
花映塚式の弾幕勝負とはいえ、結局は必殺技の出し合いみたいな感じになっていて、これはどうなんだろう・・・?と度々考えています。そんな中で、そう言って貰えるのは本当に有難いです。ありがとうございます。

最近は色々と忙しく、中々執筆する機会がないのですが、
そのお陰で今後の予定について答えを出す事が出来ました。
どうぞ楽しみにしていて下さい、うん。
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