この小説は二次創作です。
原作の世界観、設定を重視していますが二次創作です。 独自の解釈や二次設定があります。 どうか、それを忘れずによろしくお願いします。 その日の晩の事。チルノはあおいと共に囲炉裏を囲っていました。 囲炉裏には焼き魚がかけられ、その周りのお皿にはご飯の他に、胡瓜などの山菜が乗っています。 チルノは左から右へ、この夕食を見渡しました。 「これ、全部あおいがとったの?」何の気なしに聞いてみます。 そうね……と少し考えた後で、あおいは言いました。 「これはね、河童や麓の妖怪達がくれたのよ。何でも恩返しだってね」 「恩返し?あおいはそいつらに何かしてあげたの?」 「うん。昔、この辺まで山の上の妖怪が降りてきた事があってね。その妖怪が悪さをして、この辺りの河童や妖怪達を困らせていたの。そこを私がね……その妖怪を退治したのよ。それ以来、この辺りの妖怪達に好かれちゃって、こうしていつも食料を分けてくれるのよ」 「へっ……へぇ!!あおいってば、実はものすごく強いんだ!?あたいは最強だけど、あおいも最強かも!?あ、でも、最強なのはあたいだから、あおいはあたいの次に最強だよ」 チルノは目を輝かせて言いました。あおいは困ったように苦笑を浮かべています。 「最強なんて……強い力なんて、そんなに良いものではないのよ?それに付き纏うのは戦いだけなんだから」 優しくもどこか悲しげな声であおいは言いました。しかし、チルノはあおいの言葉を全く気に留めずに言いました。 「えー!?強い方がいいじゃん!!強ければ何でもできるし、とっても偉いんだよ?」 眉毛を釣り上げて反抗するように言いました。ですが、あおいは「うふふ、そうね」と笑うだけです。 チルノはちょっと馬鹿にされているような気がしましたが、何より優しいあおいです。 ここはぐっと我慢しました。 「さあさ、それより早くご飯を食べましょう。河童が持ってきてくれた胡瓜も魚もとっても美味しいわよ」 そう、あおいが笑顔で言ったので、チルノも気分の変え、応えるように笑顔で箸を取りました。 囲炉裏を豪華に囲っている、ご飯も胡瓜も山菜も、そのどれもが今まで食べた事がないくらいに美味しかったのでした。 次の日の事です。 チルノはすっきりと元気になり、昼にはあおいの家の外で駆け回っていました。 紅葉に透かされ、どこか赤くなった太陽の光の下。一日休んでよっぽどエネルギーが溜まっていたのでしょう。それはもう兎のように速く高くぴょんぴょんと草の上を蹴っています。 「うふふ、すっかり元気になっちゃって」 元気に動き回るチルノを目で追いながら、あおいは言いました。 その視線の先、チルノの一つ前には一匹の野兎がいるのです。 逃げる野兎を捕まえようと、チルノは秋空の下を走りまわっているのです。 あぁ、これではどちらが兎なのか分かったものではありません。 「うぎぎぃ、こうなったらー」 いくら走っても野兎を捕まえられない事にチルノは業を煮やしました。 とうとう右手に力を――冷気を集め始めたのです。 冷気はみるみるうちに右手に集まり、ダイヤモンドのようなキラキラとした白い光となりました。 「だっ、だめっ!!チルノちゃん!!」 それに気付いたあおいはすぐに声を上げました。しかし、 「あたいの力を思い知れっ!くらえっ、パーフェクトフリーズッ!!」 あおいの声にチルノは気付く事はありません。冷気を集め、それを放つ事に夢中だったからです。 そして、いよいよチルノは野兎に向けて、白い冷気の弾を投げつけてしまいました。 チルノの手を離れた冷気の弾が、ビュウウと周囲の風を切り、冷やしながら、野兎へ向けて一直線に飛んでいきます。 「くっ……」 あおいは、目を閉じ咄嗟に手を動かしました。指を交差させたり手を組んだり……。 それぞれがどういった意味を持っているかは分かりませんが、 次から次へと、目にも留らないほどの早さで、記号を作り上げていきます。 そして――結界「封術消散」!!両手を目の前で組み、カッと目を開きました。 するとどうでしょう。透明な水晶のような結界が瞬時に野兎を覆いました。 それと同時に、野兎へ迫っていた白い冷気の弾……それを打ち消したのです。 結界に触れた冷気の弾はシュウウという乾いた音を立て、煙となって宙へと消えていきます。 「えっ!?」チルノはその光景に驚いて目を丸くしました。 驚くのも無理はありません。自分のパーフェクトフリーズが野兎を氷漬けにする事無く消えてしまったのですから。そして、一体何が起こったのか、全く分らないのです。 チルノは足を止め、あおいの方を見ました。野兎は何所かへ走り去って消えました。 あおいなら、今の光景を見ているはずです。あおいなら、きっと何か教えてくれるかもしれない……そう思って、顔を上げました。その直後、チルノはすぐに声を上げました。 「ちょっ、ちょっと、あおい大丈夫!?」 あおいは、はぁはぁと苦しそうに息を荒げ、膝を折り、そして両手を地面につけ、今にも倒れそうになっていたのです。チルノは慌ててあおいに駆け寄ると、自分の体を目一杯に使ってあおいの体を起こしました。 「大丈夫だよ……チルノちゃん。ちょっと気分が悪くなっただけだから……心配しないで……ね」 あおいは小さく目を開いて言いました。 「それよりね……ああいった事に力を使ってはだめ。その力による痛みや悲しみは周りに回って、最後にはチルノちゃんのもとへ戻ってきてしまうの。だから……」 あおいの優しくも訴えるような声。けれども、チルノはあおいの言葉を気に留める事はできませんでした。これはあおいの事が心配だったからに他ありません。 はぁはぁと荒かった呼吸が少しずつ落ち着いてきました。しかし、それでも以前にあおいの体に力はなく、チルノは自分よりも一回りは大きいあおいの体をずるずるとひきずりながら、あおいの家の中、今日の朝まで自分が休んでいた場所へ運ぶ事にしました。 うーん、うーん、と唸り声を上げながら、一歩一歩少しずつ前へ進んでいきます。 そして、ようやくの事で、あおいを布団の上へ寝かす事が出来ました。
by metal-animal
| 2009-09-07 17:40
| 東方短編小説
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